「ベンベルグ」のこと、覚えて欲しいんです。旭化成「ベンベルグ裏地ミュージアム+」

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はい。いきなりですが、あなたに質問です!

 

「ベンベルグ」

 

とは、何のことでしょうか?

 

 

⑴  「レーヨン」
⑵ 「トリアセテート」
⑶ 「キュプラ」

 

 

もちろん、ファッション関係の方々は即答でしたよね?

 

答えは(3)の「キュプラ」です。
初めて知った!という方はぜひこの機会に覚えてください。きっと旭化成の皆さまが泣いてお喜びになることでしょう……!

 

先日、神保町の超マニアックな裏地の博物館「ベンベルグ裏地ミュージアム+」にお邪魔してきました。旭化成さまからずっとお声がけいただいていたのですが、予約制なので1人ではなかなかお邪魔しにくくてご一緒してくれる人が現れるその日までずっと待っていたのでした。

 

今回は旭化成の高級裏地素材「ベンベルグ」についてご紹介します。

 

若い世代はほどんど知らない!「ベンベルグはキュプラのブランド」

 

”高級裏地素材”として有名なキュプラ。皆さんもスーツの裏地表記にも「キュプラ」と書いてあるのを見たことがるのではないでしょうか。柔らかくシルクのようになめらかな肌ざわりが特徴で、ポリエステルよりも吸湿・速乾性が格段にすぐれています。

混同しやすいのですが、「キュプラ」は繊維の名前で「ベンベルグ」は旭化成が商標登録したキュプラのブランドのことなのです。昔はテレビCMで「ベンベルグ」を宣伝していたそうですから、ミドルエイジ以上の方には「キュプラ」よりも「ベンベルグ」のほうがすぐにわかるのかもしれません。

しかし、服飾関係者でもないかぎり、私たちの年代には「ベンベルグはキュプラのブランド」だなんてほとんど分からないのが現実です。今回ご案内くださった旭化成株式会社 繊維事業本部の角田隆行さんによると、実際に20代の「ベンベルグ」の認知度は10%にも満たないのだそう。

「若い人にベンベルグはキュプラのブランドだということをもっと知って欲しい!」とのことでしたので、”業界人でさえ知らないかもしれないベンベルグの3つの新事実”をお伝えしていきます。

 

新事実① ベンベルグの原料は、コットン?!

 

 

まず最も驚いたのが、ベンベルグはコットンを原料にした再生セルロース繊維であるということ。正確にはコットンの種に生えたうぶ毛「コットンリンター」がベンベルグの原料です。ベンベルグは化学繊維の中でも化学物質のみを反応させ作られる合成繊維(ポリエステルは合成繊維)だと信じ込んでいたので、これにはたいへん驚きました。

 



ゴミやクズをキレイに取り除いたコットンリンターは大量の水を使ってヒトの髪の毛よりもはるかに細い繊維に引き伸ばされ、1本に撚られていきます。下の動画はミュージアムで観せていただいたのと同じものです。個人的には先染めの青の染料が真っ白い糸にジワ〜っと染み込んでいく光景に見惚れてしまいました。

 

 

新事実② 夏は涼しい!ベンベルグの驚異的な吸水・速乾能力

 

”スーツの裏地”というイメージのあるベンベルグですが、意外にも様々な衣料に使われています。自分には縁がないと思っているあなたも、今まさに着ているかもしれません。この時期、私には毎日欠かせないものとなっています。

驚くことに、世の多くの女性が愛用するUNIQLOの「AIRism(エアリズム)」にベンベルグが使われているのです。すぐに汗を吸い取って、一瞬にしてサラサラになる「エアリズム」(※キュプラ使用はレディースのみ)のおかげで、私も夏場にあせもに悩まされることもなくなりました。

ひんやり冷たくてシルキーな肌ざわりは、インナーを着ていることを忘れてしまうほどの快適さ。それもそのはず、「エアリズム」にはベンベルグが約30%も使われているのです。ミュージアムではベンベルグとポリエステルの裏地の吸水性・速乾性を比較する実験を見ることができます。(実験の結果は、圧倒的な実力でベンベルグの勝ち!)

 

 

新事実③ ベンベルグを生産しているのは世界で唯一「旭化成」だけ

 

 

いまや世界中で愛されている「ベンベルグ」。「これほどの素材なら世界中で作られているんでしょ!」と思いきや、なんと生産しているのは日本の「旭化成」だけなのだそうです。

1897年にドイツのJ.P.ベンベルグ社が銅アンモニウム法という繊維の新しい製造方法の工業化に成功したことがベンベルグの歴史の始まりでした。1928年に旭化成が同社からその技術を導入。1931年には宮崎県延岡市にベンベルグ工場を建設し、操業をはじめます。以来80年以上にわたり、旭化成はこの技術を発展させながら守り続けてきました。

現在は”サスティナビリティ”にも積極的に力を入れており、審査が厳しいといわれる世界基準の認証をいくつも取得しています。

 

昨年の2016年秋には「ベンベルグ」85周年を記念したビッグレセプションが開かれました。この日のために、システマ・モーダ・イタリア、ピッティ・イマージネ代表のクラウディオ・マレンツィさんをはじめとする、イタリアメンズファッション界の大御所らが来日。

旭化成のベンベルグがいかに世界に愛されているかを感じます。合わせて、服飾史家の中野香織さんやファッションディレクター 大住憲生さん、写真集『JAPANESE DANDY 』の著者 河合正人さんのトークセッションも開かれるなど、それはそれは豪華なイベントでした。

私もご招待いただき、ちゃっかりとミュージアムに記念に飾られている集合写真の最前列に写っております(笑)ちなみにですが、私が満面の笑みで腕組みしているおとなりのジェントルマンは元・三陽商会 代表取締役会長 中瀬 雅通さんです。(いま考えると、なんて恐れ多いことを)

さて、ベンベルグの3つの新事実はいかがでしたでしょうか?

これらの新事実の中に1つでも知らないことがあったなら、ぜひ神保町の「ベンベルグ裏地ミュージアム+」へ足を運んでみてくださいね。ただし事前のご予約をお忘れなきように。「行ってみたいけど、ひとりじゃ心細いよ」という方がいらしたら、中里が(できるかぎり)なんとかしますのでご相談ください。

 

 

 

それでは、最後に復習です。

 

 

「ベンベルグ」とは、何のことでしたか?

 

 

 

流石にもう覚えましたよね(笑)